2008/08/20

がん患者学1

【生きる執念と生き方の報告】


病院では治らない、と悟ったとき、どう生き延びるか
どうやってがんを克服したのか
数多くの長期生存者を取材しての、感動のレポートです

-----------取り上げた本------------------
「がん患者学1」文庫版・著者:柳原和子
発行:中央公論新社
----------------------------------------

この本は、ガンが治った、ガンはこうして治せ、奇跡の生還・・などの部類には属さない、読み応えと勇気がもらえる本です

現代医療の矛盾を突きながらも、代替医療、代替療法一辺倒では有りません

この本は、進行がん、末期がんと言われたにもかかわらず長期に生存している人たちを丹念に取材したドキュメントです

何よりも、迫力があるのは、医師や医療機関が見放した後の、病との対処の仕方、その生き方、総じて生き延びる方法レポートしたところにあります

∞∞∞【恨みで人生を終わりたくない】∞∞∞

著者自身が今もなおガンと戦いながら生きておられ、生への執念がこの本の根底に流ているようです

著者は書いています

『この書物が発刊された二〇〇〇年夏は、赤ん坊の頭大の卵管がん原発巣と、左右の子宮、卵巣、腹膜への少量の播種状の転移が発見され、初発の告知を受けてから約三年後だった。』と書いています

つまり、このガンの進行と治療中にこの本・インタビューは続けられていたのです
それこそ、医者からではなく、長期生存者の方がたに教えを乞うように

『死についてはことあるごとに、いつかはやってくる、と自らに言い聞かせている
達観はできぬものの、なんとかして生物としての必然、を受け止めよう、と心がけている

どうしても受け入れられないのは、入院中に仲間と共有してきた、数々のあの「治療と死と後悔、そして恨みの物語」ではないのか

「先生、どうしてもっと前に再発を発見してくれなかったんですか?」
「先生、この治療でほんとうにガンはなおるんですか?」

素朴で本質的なこの問いに、じつはほとんどの医師は答えられない・・・ (治るという)必死に夢見たばら色の世界ははかなく、もろくも崩れ去る
激しい副作用を耐えて耐えてしのいだがゆえに、後悔は深い
さらに医師への懇願と依存が深ければ深いほど、こうした素朴な疑問は医療と目の前の医師への恨みに転じやすい

「あんなに厳しい副作用にたえてきたのに、あの治療はいったんなんだったのか?」
「あの医者はこうなるとわかっていて、この治療をすすめたのではないか!」
「みすてるのか・・」

静かに、近未来に訪れる死の事実を受容できる人もいる
しかし、決して受容できない、諦めきれない人もまたおおいのだ。』

∞∞∞【病院に頼らず、自分なりの生存方法を求めて】∞∞∞

『治すことを目的に進歩を遂げてきた現代医療は、治せない患者の具体的な心、日常のプログラムについては無力だ

だが、なにがどうであれ、人生の終幕を恨みだけでは終えたくはない
お手本がほしいと、と私は思った

安らかに死ねるための方法はないのか?
あわよくば治る処方箋があるのではないか?

それに答えうるのは、末期がん、再発進行がん、進行がんを宣告されながら五年、一〇年を生きてきた患者たちをおいてほかにはない』

こうして、取材が始まります

この「がん患者学?」に登場する方は18人

すべての方が、まず病院での過酷な治療の生活を送ります

外科手術、放射線治療、抗がん剤投与
そして、ほとんどの方が、医師と病院への不信感と恨み、後悔を抱くにいたります
それは、医師・病院が非人間的ということではなく、患者の心・心境をほとんど考慮に入れないためといえます

つまり、患者を人間としてではなく、ガンにかっかった病人、ガンを治すだけのための存在としてのみ見るからではないでしょうか

その人の生活、考え、心境、希望など、考慮されないからではないでしょうか

さらには、医師・病院の「自分の治療方法に口出しするな」的な閉鎖的、権威的、一歩間違えば脅迫的な対応に、ひどく傷つけられるからではないでしょうか

∞∞∞【医師をたよったのが間違いでした。】∞∞∞

典型的なのは、「医師をたよったのが、まちがいでした」の章の匿名の女性の例です

初期のがんということで、できるだけ手術をしたくないという訴えは無視され、半ば強要的に手術を強いられます
その後の抗がん剤投与にしても、もう勘弁してくれ、というところへ来ても訴えを受け付けてくれません

とうとう「このままでは死ぬ」と直感して、逃げ出す羽目になります

医師・病院が頼れない、いや、命を縮めるかもしれないとなったら、自分で、納得のいく医師や病院、治療法、或いは代替医療、そして生き方と方法論を探さなくてはなりません

食事療法、自然療法、生きがい両方、気功、丸山ワクチン、健康食品の組み合わせ、等など、幾つかの事例が紹介されていきます

登場する一人一人の方が、それこそ生き延びるための手探りの未知の世界へと挑戦していきます
いや、挑戦せざるを得ないのです

ここに登場する人たちは、幾つかの共通項を感じます

・正々堂々とはいかなくても、医者や医療機関に「ノー」と言っている
・生きる執念を無くしていない
・情報収集のための行動、或いは仲間の存在
・根本のところで自分の人生を肯定している

続く文庫本の第2部では医療関係者への取材、第3部では著者自身の闘病生活が報告される予定です

がんに関心のある方には、お勧めの本です

■「がん患者学」中央公論社版
*中央公論社版は、1部、2部、3部に分冊して発行されている。
*完全版は晶文社から発行されている。
■著者・柳原和子
ノンフィクション作家。1950。筋ジストロフィー、医療過誤、薬害エイズ訴訟、 などに関心を寄せ作品を発表。「「在外」日本人」、「カンボジア24色のクレヨン」 「告知されたその日からはじめる私のがん養生ごはん 」等
■病歴:
卵巣がん。1997年、卵管がん原発巣、左右の子宮、卵巣、腹膜への少量の 播種状の転移が発見される。手術、抗がん剤治療を行う。その後、さまざまな代替医療を試みる