私は薬に殺される
取り上げた本---------------------------
「私は薬に殺される」福田実 著幻冬社
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創刊号は、重い本の紹介からはじめることになりました。
本との出合いは、瞬間の出来事です。
店頭で何気なく手にした本が、衝撃を与えることがあります。
今回の「私は薬に殺される」というのも、私にとってそのような本になりました。
◆----- 若手の俊腕部長として活躍していたのが急転直下 -----◆
著者は、33歳まで、大手ベンチャー企業の若手部長として目覚しい業績を上げ、 会社人間のプロとして飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍していました。
ところが、高脂血症の治療で投薬された、キッセイ薬品の「べザトール」と三共の 「メバチロン」の2つの薬の副作用で、末梢神経の障害が起こり、ホルモン代謝の 異状により「横紋筋融解症」という筋萎縮症に見舞われることになります。
19997年、34歳のときです。
二つの薬を併用して、体の変調は次のように起こってきました。
3ヶ月目に入った時でした。
「突然、腰に言葉では表現できないほどの痛みがきた。両足に脱力が出て、歩け なくなった。正確には、腰というより臀部、つまり尻のうえの両側の筋肉が痛く て、両足にまったく力が入らない」
併用1年後ほどのこと
「そしていきなり体全体が柔らかくなった。肛門の筋肉がゆるくなり、大便をして、 ウオッシュレットを使うと水が大腸の中まで入るようになった。体全体の筋肉が柔 らかくなり、首の筋肉もぐらぐらし始めた。
異変はそれだけではなかった。以前に治療した虫歯6本が急に歯髄炎に、足には水 虫、目は結膜炎、背中にはヘルペス、喉は咽頭炎となり、EBウイルスに感染して 左のリンパ腺も腫れた。」
「顔全体の筋肉、両肩の後ろ、胸、喉、歯ぐき、両腕、指、そして体全体の筋肉 がぐいぐいと締め付けられ、体の中央に近い部分の筋肉から萎縮していく。後で 分かったが、すべて横紋筋のところだ。喉も話をして使うと疲れて苦しくなり、 声が出なくなる。つばも飲み込みづらい。爪も薄くべにゃべにゃになって、縦に 筋が沢山入るようになった。」
まさに体の地獄に突き落とされたのです。
これが第一の地獄でした。
◆----- 医療会、弁護士団体、行政との命がけのやり取り -----◆
1998年12月、35歳
とうとう会社へいけなくなり、自宅療養状態に入ります。
福田氏は、この事実を薬害訴訟と、行政訴訟へ持ち込む決意を行うのです。
ここから命ぎりぎりの戦い、第二の地獄が始まります。
医療の世界の閉鎖性、カルテの提出拒否、ややもすれば資料改ざん。
弁護士の対応と、力不足、そして「金にならない訴訟は避ける」体質。
特に、薬害を証明するための、証拠としての治療データをそろえるのに、病院側 の閉鎖性、拒否的な対応に直面するのです。
この証拠がなければ、訴訟自体が成立しないのです。
さらに「薬害である、或いは極めてその疑いが強い」という、医師の診断書と意 見書が必要となってきます。
これを書いてもらうための、医者探し、そのため各種の団体とのやり取りもまた、 半ば絶望的な進展を見せます。
集団訴訟では、原告数が多く、マスコミや社会も動きますので、協力弁護士団も 組織され、長期に渡る裁判闘争も実現、維持できるのです。
福田氏の場合は、完全に一人での戦いを始めるため、人的支援が皆無、資金的困 難に直面します。
弁護士に依頼しても、埒が明きません。
福田氏は、この根気の要る突破口作りを、孤独と、絶望と、萎縮してゆく肉体の 器を抱えながらそれこそ懸命に行っていきます。
一方、行政側の対応は、一個人の依頼には極めて冷たく、横柄です。
「薬に関する確かな情報がほしくて厚生省(現在の厚生労働省)医薬安全局の安 全対策課に電話した。女性が出て、『一般の方には教えられません。薬の問題で まずい内容のものは、一年位出さない場合があります。いるんですよ、こうやっ て医師が信じられないということで電話をかけてくる人が』と信じられないこと を平気でペラペラ言っている。」 厚労働省に薬害申請して、永年待たされた果てに約2年目に「棄却」の通知。
読んでいても何ともいえない気持ちになります。
◆----- 背筋を立てた生き方が感動と迫力 -----◆
本というのは、ただ辛い、重い、絶望、だけでは読み続けられません。
やはり何かの光があって、最後まで読ませるのです。
この本の魅力は、福田氏の生きていくうえでの背筋の立て方にあると思います。
ビジネスの現場でプロとして生きたきた姿勢が、この戦いを支えています。
或いは、怒りの源泉になっています。
ビジネスのプロは絶えず次のような課題に全身で立ち向かいます。
顧客(市場)に顔を向けたサービス・対応
説明責任
行動責任
効率性、合理性
組織の活性化への内部改革・変革への意思の確立
組織のリーダーのリーダーシップの習得と実践
部下の育成
組織運営
そしてその結果としての利益の確保
このように鍛えられた福田氏は、医師、弁護士、行政担当者にまっすぐに立ち向 かっていきます。
そこで接する人たちは、福田氏の出現によって「正義」「誠実」「信念」という 価値が試されて行くのです。結局『命を張って』自分の仕事をしているかどうか が問われてしまうのです。
読んでいて、こちらが唸る場合も色々あります 福田氏が出会って、人間性が露になっていく模様は、私たちの人生の縮図です。
感動的なのは、永らく職場を去った後でも、元の会社の社長の心的・金銭的応援、
この手記をワープロ打ちする友人、
そして、最後に現れる「診断書と意見書」を書いてくれる医師の出現、
です。
そしてついに、2003年7月25日
「真実を証明するために、俺は東京地方裁判所民事3部606号法廷に原告として立つ。 精いっぱい生きてきた俺の人生を、きちんと終わりにするための認定裁判が始まる。」 生きる勇気と、生きる姿勢を考えさせられる本です。